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2学期始業のことば(校長あいさつ)

2020年08月19日

2020年度 2学期「始業のことば」(短縮版)

 

短い夏休みでした。みなさんが健康で、元気でいることがいちばんうれしいです。

お盆も返上で、6年生が学校にきて学習していました。そのまま集中力を維持して、最後まで「仲間と共に」、仲間と先生方を信じて、真剣勝負で自らの目標に挑んでください。

後輩たちも6年生に負けぬよう、常に仲間と共に、自分で考え、自分で行動し、学習にクラブに、そのときどきに集中してください。

*新型ウイルス感染防止と熱中症への対策についての注意事項等(省略)

 

今日は、「自分が変わる」をテーマに話をします。

みなさん、夏休みにどんな本を読みましたか?本や新聞は「考えるヒント」を与えてくれます。本や新聞を読む人は必ず、自ら高い目標を掲げ、自らその目標を獲得する人であると私は確信しています。私は、「是非読みたい!」と思っていたこの本を読みました。

『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。図書館に何冊か入れます。競って読んでください。

作者はブレイディみかこさん。私と同じ福岡市の出身。私よりひとつ年下。同じ世代。

彼女も音楽大好きなのでその時代、チューリップや井上陽水など、福岡が生んだ音楽を聞いていたんだ、同じ時代に同じ風景を見ていたんだなって思うと、それだけで「共感力」がわいてきます。

ブレイディみかこさんがその後、イギリスで暮らした思えば、ビートルズやエリッククラプトン、レッドツェッペリンなどの、私も大好きなブリティッシュ音楽に憧れていたんだろうな、なんて思えて、ウキウキ気分で、4時間ほどで読み終えました。

優等生の主人公が通う中学校は、人種も貧富の差もバリバリの「ごちゃまぜ学校」です。

その中学校には人種差別あり、ジェンダーの苦悩あり。人間関係もギスギスしたり、自分は何者かというアイデンティティに悩んだり、毎日が変化と多様性の渦。

何が正しいのか。生きていくうえで本当に大切なことは何か。イギリスと日本の文化の違いもわかって、実に面白い! 作者ブレイディみかこさんが「母ちゃん」で、主人公の息子さんと、ともに考え、共に悩み…でも、中学生の主人公が仲間と共に、自分の力で、数々の問題を乗り越えていく。そんな実話をベースにした物語です。

どうして『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』か。前半部分でその意味がわかります。でも…面白いのは、『ちょっとブルー』が何色に変わるかなんです。最後まで読んで、「なるほど!」って誰もが思うことでしょう。「最後まで読んでわかる」。これが「読書生活」の魅力のひとつだと、私は思います。

「sympathy」。これ、なんと読みますか。どんな意味ですか。意味は、私が終業式のテーマとした「共感」です。他にも「支持や同意」「友情や理解」という意味もあります。

「empathy」じゃあ、これは。「他人の感情や経験などを理解する能力」だということです。

「sympathy」は、「他者の感情への理解」「心の状態」なのですが、「empathy」は、「他者の心に共感できる能力」なのです。この区別は、この本の75頁に載っています。

イギリスの義務教育では、多様性つまりダイバーシティーの社会、グローバルな社会で生きていくためのカリキュラムがあります。それは、自分の能力を存分に高めるためのものであり、多種多様な人種、文化や習慣や考え方の違いを認め合う学習なのです。その学習によって、「他者の感情を理解できる能力」つまり「empathy」を身につけるのです。

この本の醍醐味は、「イエローでホワイト」な中学生の主人公が、持ち前の「sympathy」を存分に発揮して、仲間と共に「empathy」(共感能力)をどんどん身につけて、自ら変化し、自分の未来を切り拓いていくようすだと、私は思っています。

今日の話のテーマは「自分が変わる」です。

この本の主人公も自らが変化していくのです。「イエローでホワイト」であるが故に、いくつもの差別に遭遇します。だから、「ちょっとブルーな気分」になることがあるのですが、そんな自分に閉じこもるのではなく、「ブルーな自分」を自ら脱ぎ捨て、他者が行う差別に対し、「それは違う」「それは言ってはいけない、やってはいけないことだ」とそのときどきに、差別を見逃さず、差別を指摘していく。「母ちゃん」はときどき、主人公(息子)に考えるヒントを与える。そして主人公は、最後には、差別する他者と仲間になっていくんです。実にたくましい。

 

先日、うれしいメールがOBから届きました。名古屋大学を卒業し、現在は「中部電力」で働く猪原暁君からでした。盈進中学ではサッカー部のキャアプテンでしたが、高校ではけがに苦しみ、愛するサッカーを断念。その後は、人権や平和の問題にも積極的に取り組みました。

会社のホームページに彼が掲載されています。盈進のHPの「最新情報」でも紹介していますから、また見てください。彼が、こんなことばを発しています。

「(仕事をする上で大切なことは)計画の段階から、現場の状況をよく見て、いっしょに仕事をする人と、きめ細かくコミュニケーションを取ること。さまざまな立場の人の意見を聞いて、多くの人と力を合わせ、課題解決に向かい、ベストな方法にたどり着いたことが、これまで何度もありました。その結果、苦労して形になった構造物を作業員の方たちといっしょに見た時は、言葉にならないほどの喜びが湧いてきます」。猪原君は、他者を尊重し、自分からコミュニケーションをとる重要性を教えてくれています。「自分が他者に対して何ができるか」という教えでもあると思います。

 

8月9日は何の日ですか。長崎原爆の日です。みなさんは、ことしの長崎の平和宣言を聞いたり読んだりしましたか。長崎平和宣言はこう、私たちに投げかけました。

「75年たった今も私たちは『核兵器のある世界』に暮らしている。どうして私たち人間は核兵器をなくすことができないでいるのか」と。そして、昨秋、来日したローマ教皇の言葉を引用しながらこう訴えました。

「核兵器から解放された平和な世界を実現するには、すべての人の参加が必要です」(ローマ教皇)。しかし、問題は核兵器に限った話ではない。地球に住む私たちができることは、コロナ問題をはじめ感染症や気候変動も、核なき世界への道を切り開くのも「誰かの問題」ではなく、みんなひとりひとりが「当事者」であるという意識を持つこと。つまり、「自分が変わる」ことを求めたのです。

 

みなさん、2学期は是非、「自分が変わる」ことを意識して、生活してほしいと願います。

自分が変われば、他者への、自分のまなざしも変わるでしょう。そうなると、毎日見る自分の生活、自分の家族、自分の教室などなど、自分をとりまくまわりの環境や人を見る目が変わるでしょう。いや、変わるんです。私はそう思っています。

 

最後に、もう一度、これを見てください。終業式でも示した「針のない時計」。

「時は自分で刻む」のです。その時その時を、自分でどう使うか。すべては、誰かの、何かのせいではなく、「自分がどう変わるか」です。終わります。

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