学校法人盈進学園 盈進中学高等学校

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2022年度 入学式 校長式辞

2022年04月06日

テーマ「仲間と共に! Be a challenger、Be a pioneer」

 

盈進坂300本の桜が、みなさんを歓迎しています。(中略)

わが私学盈進は、創立者藤井曹太郎先生によって1904年(明治37年)に創立され、今年で118年目を迎え、全国でも屈指の私学の伝統校である。

この間、わが盈進は、幾多の戦争と、激動の時代を乗り越え、いま、ここにある。

政治、経済の世界をはじめ、法律の世界、スポーツ界、芸術の世界など、あらゆる分野で活躍する卒業生約3万人が、母校盈進と諸君を見守っている。

地元福山、府中市の企業の約70%が盈進OB、あるいは関係者が会長や取締役など最重要ポストに就いておられる。まさに、地元の経済界を支え、発展させてきたのは、わが盈進の同窓生であると言っても過言ではない。

この118年の間、校舎も、東町の製糸工場跡からはじまり、三吉町校舎を経て、1972年(昭和47年)に、この千田町へ移転した。以来、今日まで50年、半世紀が経過したが、3年前、高校校舎新築、校舎正面に広い図書館を設置、中学校校舎改築、ICT環境も整え、一昨年は新グランドもすべて完成した。諸君は、全国に誇るどこにもない、極めて機能性の高い校舎で学習できる。

諸君はこの歴史と伝統の私学盈進へ、いま入学した。是非ともこの歴史と伝統を深く自覚し、盈進生として常に、他者への感謝を忘れず、とりわけ、社会的に弱い立場にある人たちの痛みを感じ、寄り添う気持ちを持ち、謙虚に、そして誇り高く生活してほしい。盈進の教職員はみな、心を合わせて、諸君を心から愛する。愛することは支え合うこと。「共に学び、共に生きる」ことである。

新型コロナウイルス感染の社会状況に心身共に疲れているのではないかと心配している。大切な人に会えないのは本当に辛い。だから一期一会、出合いを大切に、と私は言いたい。

この問題は、国境を越えたglobalな現代に生きる人間が引き起こした人間社会の矛盾であり、国境のないglobalな現代に生きる私たち人類が、避けては通れない問題である。

いま、ウクライナの戦火の中で、怯えながら恐怖と欠乏にあえぎ、悲しむ人々を思うとき、誰もが、胸をかきむしられることであろう。だから、いまこそ、ひとりひとりが、ひとりの人間として、毎日をどう過ごすか、そして「どう生きるか」、自分自身が問われている。

 

これから、「仲間と共に! Be a challenger、Be a pioneer」というテーマで話をする。

諸君、学校生活で最も大切なものは何だろうか。それは「仲間」だと、私は信じている。かけがえのない仲間がいれば、喜びも痛みも分かち合える。だったら、勉強も、授業も、クラブも、行事も絶対に楽しい。

だから、とことん、いま出合った仲間を大切にしてほしい。心から信頼できる仲間をつくってほしい。そしてひとりひとり、誰にも負けずに明るく笑顔であいさつをして、相手を敬い、一生付き合う「生涯の友」をつくってほしい。

盈進には、「eスマイル宣言」という、どこの学校にもない、生徒自らがつくった、仲間を大切にするためのルールがある。それに従って日々、生活しよう。

盈進の建学の精神は「実学の体得」。すなわち、「いかなる時代であっても社会に貢献する人材となる」である。そのために、自分はどんな人になるか、どんな職業に就いて、どのように社会に貢献するかを、常に自分に問うて、悩む。将来のことを仲間と大いに語る。語ってはまた悩む。その「問うて悩む」プロセスと時間が自分を鍛えるし、夢を大きく、そして、目標を高くしてくれると私は確信している。進路目標は、本日配布される『輝く先輩』の冊子を大いに参考にして、高い目標を建てて、妥協せず、日々努力してほしい。

盈進は教育の大きな柱に「クラブ活動」を位置づけている。クラブ活動は、キャプテンや部長を中心とした生徒主体の、自主的、主体的な組織である。中高一貫のよき先輩・後輩の関係性の中で、責任感、忍耐力、協調性、共感力、思考力等々、社会に貢献するために大切な全人格を形成する力を育む。

昨年度、中学女子バドミントン部は、創設以来の中国大会出場という快挙を成し遂げた。高校女子剣道部は先般、全国大会に出場し、強豪校を破り、一回戦を突破した。

玄関付近にはためく懸垂幕を見るまでもなく、文化部も含め、広島県内から全国まで、トップレベルで多くのクラブが活躍している。諸君も是非クラブ活動で心身を鍛えてほしい。

だが、クラブ活動は、結果を求めてやるものではない。あくまでその目的は、人間性を鍛えること、愛してやまないクラブ活動を通して、仲間と友情を育み、部員相互の信頼や絆を結ぶこと。その強さが、結果的に成果に結びついているということを忘れてはならない。

 

諸君、社会は急激に変化している。だからこそ本を読む。盈進には、普通の学校の3倍はある盈進図書館「みどりのECL」が新校舎のど真ん中にある。そこで本を借りる。新刊本が6000冊ある。世界の絵本もある。

読書は、「自分で考え、自分で行動する」ための多様な価値観を学ぶためにある。読書は、人生のすべてが単純ではないことを教えてくれる。そして、その学びの向こうに、仲間と共に「どう生きるか」という知恵と哲学を授けてくれる。

読書は、一人で行う孤独な営為である。しかし、それは常に、自分との、あるいは「誰か」や「何か」との「対話」である。本からことばを受け取り、感情が豊かに耕され、そこからそれまで知らなかった世界へと視野が広がっていく。

いま、大学は、激変する答えのない時代を生きるための力、すべての学習の土台としての「読解力」を求めている。私は、ものごとを“複眼的に考える力”が真の読解力だと考えているが、その読解力や深い思考力は、日頃からの読書体験が不可欠なのである。

最近、私がもっとも心を揺さぶられる契機となったのがこの本。

エーリッヒ・フロムの『愛するということ』。フロムという人は、『自由からの逃走』という世界的な名著を生んだアメリカに亡命したユダヤ人。社会心理学、精神分析、哲学の研究者である。

私の心が揺さぶられたのは、こんな哲学書を本校の中学3年生が読み込んでいたからである。

この本の英語のタイトルに、この本の主張がある。「The Art Of Loving」。「Art」はふつう、「芸術」と訳されるが、「人がつくり出すもの」、つまり「技術」と訳すこともできる。だから、「The Art Of Loving」は、「愛は技術」と訳すのが妥当だろうと思う。では、それは一体どういうことか。

人はよく「どうすれば自分が愛されるか」を考える。だが、著者のフロムはそれが根本的に間違いなのだ、と異を唱える。

「愛することは、自分から他者に『与える』こと。喜び、理解、興味、ユーモア、悲しみなど、自分の中に息づいているものすべてを他者与えること」なのだと。

そして、「愛は人が自然にもつ力ではなく、鍛錬して身につく高度なアート(技術)」であると説く。つまり、愛してもらうのではなく、自分から他者を愛することが、愛の本質だということ。本校の中学3年生は的確に、この本の主張を自分のことばに血肉化した。

 

中学生は読書科の授業でこの『100万回生きたねこ』を読む。「愛とは何か」という問いが立てられている。その問いの前で、自分探しの旅に出てほしい。それが本当の「探究」である。

いま、ウクライナの戦火に誰もが、恐怖、喉の渇き、ひもじさ等々に思い巡らし、胸を痛める。そんな時ふと、確か、サン=テグジュペリは、第二次世界大戦中に『星の王子さま』を書いたよな…小学生の時に読んで、友達と語り合ったのを覚えている。よし、久しぶりに読んでみようかと思うにいたって先月、読んだ。

さすがに、長年、読み継がれてきた名著である。この本には、「目に見えないが、本当に大切なものとは何か」という問いあり、わたしたちに迫ってくる。「愛する」という行為も、先ほど伝えた、クラブ活動で育まれる友情や信頼や絆もまた、目には見えない。

諸君と共に、自戒を込めて、考えたい。人に「こうしてほしい」と言う前に、少し立ち止まり、自分が他者に「与える」ことをしているかどうか、自分から「他者を愛しているかどうか」を考えよう。そして、「どうせダメ」という前に、「自分に何ができるか」「どうすればできるか」を考えよう。

 

世界はウクライナの問題だけでない。アフガニスタン、香港、ミャンマー、シリア等、世界のあちこちで独裁者たちが人権と平和を侵害し、民主主義を踏みにじっている。

難民問題も、子どもの貧困も、すべて、わたしたちの日々の暮らしに結びついている。だから、誰もが当事者として「どうすれば解決できるか」、どうすれば、自分は「平和・ひと・環境を大切にする」(盈進の基調)ために貢献できるかを問い、悩み、考え、行動しなければならない。だからこの盈進で、授業やクラスやクラブや行事で心身を鍛え、本を読み、自ら心と教養を耕してほしいと願う。

諸君はみな、ご家族にとって、私たち盈進の教職員にとって、かけがえのない大切な存在だ。そして諸君にはみな、必ずすばらしい能力がある。盈進は諸君の能力と個性を心から信じる。だから、自分と仲間の個性を尊重し合い、自分と仲間を好きになり、学習でもクラブ活動でも、とことん好きなことを見つけて、やり抜いてほしいと願う。

だから常に、盈進共育「仲間と共に、自ら考え、自ら行動する」ができているかを問うて、悩みながらも日々努力し、前進しほしい。決して、妥協してはならない。

意志あるところに道は開ける。「Where there is a will, there is a way.」である。

 

諸君。きょう出合った仲間と、これから出合う先輩たちと、固い友情を育み、新しい盈進の歴史と伝統を築いてくれることを大いに期待する。激変するこの時代に、希望の光を灯すために、常に努力を惜しまない誇り高い盈進生として、建学の精神「実学の体得」~社会に貢献する人になる~ために、常に問い、悩みながら、自分を鍛えてほしい。

「仲間と共に! Be a challenger」挑戦者たれ、「Be a pioneer」開拓者たれ。

盈進はそんな諸君を日々、全力で応援する。

 

 

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