学校法人盈進学園 盈進中学高等学校

ホーム最新情報創立116年記念式典を挙行しました

最新情報

創立116年記念式典を挙行しました

2020年11月30日

1904年(明治37年)に創設された本校は今年で創立116年となり、本日創立記念式典を挙行いたしました。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、生徒は各教室にて参加しました。

創立記念式典優秀生徒表彰

クラブ活動や各種コンテストなどにおいて優秀な成績を収めた生徒の表彰を行いました。受賞者は以下のPDFの通りです。

校長挨拶

みなさん、新校舎1階、中央階段近くに、わが私学盈進の歴史と伝統を知ることができる資料室がありますが、入ったことがありますか。私は、心が沈んだときなど、そこに行くことがあります。気持ちが落ち着き、身が引き締まるのです。創立以後の116年の年表もあるし、1905(明治38)年発行の第一号の修業証書も展示してあります。それらをながめていつも、こう思います。

「ああ、私学盈進は、こんなに長く続いているのか。この歴史には壮絶な困難がいくつもあっただろう。その困難を乗り越えた生徒や教職員がいて、私がある。創立者・藤井曹太郎先生をはじめ、先人たちのご努力に応えなければならない」

私たち人類は、現在も世界中で、新型ウイルスに悩まされ続けています。罹患者が増え続け、第3波が私たちの暮らしと命をいまだ、脅かしています。特に、医者や看護師など、医療従事者の不安は増すばかりでしょう。この困難は一体、どこまで続くのでしょうか。おそらく、開発を待つワクチン(予防薬品)の安全性が実証され、そのワクチンが世界の人々にほぼ、均等に行き渡ってはじめて、この窮屈な日常が解かれるのだろうと思ったりしています。

そんなことを思っていた私は最近、35年前の学生時代に読んだ本を読み返したくなって、手に取りました。これです。吉村昭さんの『雪の花』。私はこれまで、みなさんに、人と人とのつながりを絶とうとする新型ウイルスに悩まされている今だからこそ、弱い立場にある人々に対する共感力や、やさしさや思いやりの心をもとうと伝えてきました。英語では「empathy」、つまり「他者の心に共感できる能力」を大事にしようと伝えてきました。

また、混沌として先が見えない現在を生き抜くためにも、「自分自身が変わる」という意志を持とうと伝えてきました。

今日は、「自分がやる」をテーマに話をします。

『雪の花』は、江戸時代末期の実話をもとにした歴史小説です。北陸は福井藩の町医者・笠原良策が、極めて感染力の強い天然痘という疫病に立ち向かい、人々を救う話です。天然痘は現在、種痘という予防接種が世界に行き渡ったことで、地球上から根絶されていますが、種痘が確立していなかった時代は、致死率(人々を死に至らせる確率ですね)が高く、また、死なないまでも体中に吹き出ものの痕があちこちに残るために、人々から激しく恐れられた疫病です。

『雪の花』に、天然痘に怯えた当時の人々ようすがこう描かれています。

福井の町中を、棺を積んだ大八車が日に何度も車輪の音をひびかせて走り、そのたびに、人々は恐怖におそわれて、逃げまどった。

そんな毎日に、医者として為す術もない自分を恥じた良策は、種痘という天然痘の予防法がヨーロッパで確立したと知って、奔走します。良策は、自分の財産をなげうち、命をかけて、種痘に使う「痘苗」というウイルスの液を福井に運び込む計画を立てます。痘苗を京都で入手し、痘苗が枯れないように、子どもの体に接種して、福井まで運ぶのです。江戸時代末期ですから歩いて持ち運ぶしかありません。しかも時は真冬。京都から北陸へは、深い雪に覆われた道なき道を山越えしなければなりません。体力消耗。体は冷え切り、眠気が襲い、死が迫り来る。息絶え絶えに、なんとか福井にたどり着くシーンがまさにドラマチックなのですが、福井に到着しても試練が待ち受けていました。

今でこそ、私たちは、ワクチン接種が、ウイルスや細菌に対する免疫をつくりだし、感染しにくい体をつくると知っています。しかし、時は江戸時代。医者でも予防接種の仕組みや効果を知らないし、まして一般庶民が知るはずもなく、さらに、天然痘の膿を身体に埋め込むなどということに庶民が激しい恐怖心を抱いたことは、何も不思議なことではありませんでした。

だから、良策の医術に幕府も藩も医者の仲間も、ことごとく反対。挙げ句には、福井の方言で「おかしな医者」という意味の「めっちゃ医者」と罵られ、石を投げられ、全身血だらけになって途方に暮れます。それでも尚、良策はただただ、「医者として人々の命を守る」という信念を貫き、己を奮い立たせて、諦めずに行動し続けたのです。だから、そこに、一人、また一人、理解者が生まれ、その環が広がり、天然痘から人々の命を守る時代をつくり得たのです。

このような先人たちの本当に命がけの努力があって、私たちの現在があります。「歴史に学ぶ」とは現在を知ることなのです。歴史とは「現在との対話」です。

困難の中にあっても、「誰かがやるだろう」ではなく、「自分がやる」という強い意志が、やはり、新しい時代を切り拓くのだと、この本『雪の花』は、大学一年の私に教えてくれました。本はやっぱり、「自分はどう生きるか」を考え、悩み抜くヒントを与えてくれます。本は、私にとっては、生きる養分を絶えず送ってくれる母胎につながる「へその緒」のようなものだと、感じています。

みなさん、いつも伝えているように、本を読んでください。毎日、盈進図書館「みどりのECL」に行って、本の声を聞いてください。新聞も読んでください。図書館には日本語の新聞だけではなく、英字新聞もあります。図書館と職員室には毎日、4社分の新聞コラムが読めるように用意してあります。繰り返します。本や新聞は、「自分がやる」ことは何かを考えるヒントを授けてくれるのです

みなさん、本校HP「最新情報」に、また「輝く先輩!」に、医師の島谷倫次さんが紹介されています。先日、留学先のロンドン大学から、論文のデータがほしいと、後輩のみなさんにアンケートをお願いした先輩です。「輝く先輩!」の中で、島谷さんはこう言っています。「ロンドンで英語が通じず、自分の英語力の無さを痛感した。英語の勉強はやってやり過ぎることは絶対にない」と。

先日、島谷さんからE-メールが送られてきました。一部を紹介します。

「新型コロナウイルスは世界を大きく変えています。国際的な移動は激減し、街からは人が消えました。……振り返れば、世の中は変化の連続で、歴史を見ても、産業革命、明治維新と、社会構造が大きく変化しました。阪神淡路大震災や東日本大震災等の経験を通じて、災害は起こることを前提に対策を考えないといけないということが強く認識されました。HIV感染症、新型コロナウイルス等、新しい感染症は定期的に出現しています。」

「私が医師として働きだしてやっと理解したことの一つは、「正解はない」というシンプルな事実です。患者さんが求めることもそれぞれ違うのです。正解と思われていたことが否定されることもあります。先のことが分からず、正解がない中で、どうやって生きていくのかは難しい問題ですね。」

「後輩たちに、私が言えることは、やりたいことをやろう、ということ。やりたいことが見つかってない人は、見つかるその時まで、準備しながらもがき、悩み続ければいいのです。世の中が変化するからこそ、誰のものでもない、自分自身の人生を、生きてほしいと思います。」

島谷さんは、医師として、自分にしかできないこと、自分だからできることを探しているような気がします、島谷さんもまた、『雪の花』の笠原良策のように、「誰かがやるだろう」ではなく「自分がやる」という強い信念をもった医者として、人々のために活躍してくれるだろうと、私は信じています。

今日は、創立117年のスタートとなる記念すべき日です。わが盈進も、幾多の困難を乗り越えて今日を迎えました。今日は、その先人たちのご努力に感謝し、伝統校、私学盈進の「新たな歴史と伝統」を創るために、改めて出発する日でもあります。

6年生諸君。コロナの影響で苦しい1年です。もう一踏ん張りです!応援しています。

創立につぐ盈進の大事業であった新校舎での学習生活がはじなって1年と8ヶ月。新グラウンドも完成間近です。4ヶ月後、来春には、君たち盈進生の存在に憧れ、勉強やクラブ活動で、また、盈進独自の行事で自分を磨き、仲間と共に、自分の夢を叶えたいという新入生がたくさんやってきます。目標意識も基礎学力も高い新しい盈進生が、君たち盈進生に憧れて仲間に加わるのです。楽しみですね。

では、創立117年以降の新たな盈進の歴史と伝統は誰が創るのでしょうか。私たち教職員ではありません。それは、今ここにいる君たち盈進生と、君たちに憧れ、これから盈進に入学してくる新しい仲間たちです。私学盈進の価値は、君たち盈進生の活躍によってのみ決まり、社会的評価を得るのです。新たな盈進の歴史と伝統を創るのは、あなたたち盈進生しかないのです。あなたたち青年は、私たち大人の、そして、私たちの社会の希望そのものなのです。

だから、そして、誰のものでもない、自分自身の人生なのだから、日々の生活の中で、あいさつひとつ、掃除ひとつ、毎時間の授業にむかう姿勢ひとつ、毎日をひとつずつ、心を込めて丁寧に生きよう。そして、たとえ、困難が立ちはだかっても、「誰かがやるだろう」ではなく「自分がやる」と、それに正面から向かう私たちでありたいと思います。

最後に、わが私学盈進の創立者・藤井曹太郎先生が創立時に掲げた盈進の哲学をみなさんと確認して終わります。

建学の精神「実学の体得」:社会に貢献する人材となる。
そのために、「誰かがやるだろう」ではなく「自分がやる」という意志が大切なのだと、創立記念日にあたって、私は考えています。

最新情報

TOP